摩擦接合とは

摩擦接合とは、固体材料間の相対運動に基づき発生させた摩擦発熱に伴う固体材料の軟化を利用した接合技術です。材料が溶融しない固相接合であるため、溶融に伴う材料組織変化などによる材料強度低下が少なく、また異種材料間の接合も可能である方法として注目されています。摩擦接合には、接合部材間の摩擦により接合する摩擦圧接と、接合ツールと接合部材間の摩擦と攪拌を利用した摩擦攪拌接合があります。また、それらを材料表面改質に応用した技術として、摩擦肉盛摩擦表面改質があります。これらの技術は、従来行われているアーク溶接やガス溶接等と比較すると、摩擦熱以外の熱源やガス・溶接棒・フラックスが不要であり、ヒュームやスパッタがない安全な作業環境で実施することが可能です。また、機械設備を用いた接合であるため、寸法精度の高さと品質の安定性においても優れています。

摩擦圧接 (Friction welding)

摩擦圧接とは、接合部材間の相対運動で生じる摩擦熱によって部材を軟化させ、同時に圧力を加えることで接合界面の酸化膜層を外部に排出することで、接合界面で強固な接合を可能とする固相接合です。当初部材形状に回転駆動方式の制約があるとされましたが、近年往復駆動方式が着想,実用化され、適用範囲が拡大されました。

回転式摩擦圧接の説明 
回転式摩擦圧接の動画

摩擦攪拌接合 (Friction stir welding)

摩擦攪拌接合とは、接合する部材とは異なる第三体として先端に突起を持つ接合ツールを回転させながら接合部材間に圧入することで摩擦発熱で軟化した塑性流動域を接合ツール周りに誘起し、接合界面に沿って接合ツールを移動させることで接合部材間の材料を攪拌し一体化する固相接合法です。当初軟質Al合金を主対象とする技術として発展して来ましたが、近年のツール開発等に与り各種硬質材料への適用範囲の拡張が図られています。

摩擦攪拌接合の説明
摩擦攪拌接合の動画

摩擦肉盛(Friction surfacing)

摩擦肉盛とは、肉盛金属を回転させながら基材に押し付けることで発生する摩擦熱により肉盛金属を軟化させて基材表面に溶着させることで肉盛層を得る方法です。素材を溶融せず、希釈の少ない高速成膜が可能であり、肉盛層組織の微細化や基材への熱影響を最小にできる優れた特徴を有しています。

摩擦肉盛の説明 
摩擦肉盛の動画

摩擦表面改質 (Friction thermo-mechanical process)

摩擦表面改質とは摩擦接合の技術を応用した固相の表面改質技術であり、部材表面に担持した微粉末を攪拌ツールにより部材とともに攪拌することで、比較的厚い粒子分散複合組織等の表面改質層を得られる特徴があります。摩擦攪拌接合に用いられる先端に突起を持つツールを用いる場合は、摩擦攪拌プロセス (Friction stir processing)と呼ばれています。